去年12月、日本の鉄鋼業界の巨人であり、世界ランキングの鉄鋼メーカーである新日鐵は、アメリカの老舗大手鉄鋼企業であるアメリカンスチールを買収すると発表しました。買収価格は1株あたり55ドルで、総額は149億ドルに達し、溢価率は142%にも上ります。これは新日鐵にとって史上最大の買収案件です。
しかし、この買収は順調に進んでいません。アメリカンスチールは、120年以上の歴史を持つアメリカの鉄鋼業界の象徴的な会社の一つであり、バイデン米大統領は今年3月、この買収について声明を発表しました。バイデンは声明の中で、アメリカンスチールが「アメリカの所有であり、国内での運営が非常に重要」と強調し、アメリカンスチールとその従業員たちを支持する姿勢を示しました。
バイデンのこの声明は資本市場に大きな波を起こし、アメリカンスチールの株価は急落し始めました。既に2月には、アメリカンスチール労働組合(USW)がバイデン大統領の支持を公に宣言していましたが、当時バイデンは返答せず、1ヶ月後になって初めて支持することを口にしました。
理論的には、買収は商業行為の一種ですが、アメリカ政府はこのような事態に対処する豊富な経験を持っています。近日には、アメリカの司法省がこの買収に対して独占禁止の調査を開始したという噂があります。もし調査結果が事実であれば、買収は成功しないでしょう。
当初の計画では、この買収案件は今年の後半に完了する予定でしたが、独占禁止調査は計画にはなかったため、おそらくは11月のアメリカ大統領選挙後まで延期される可能性が高いです。現職のバイデン大統領はこの買収を支持しておらず、明確に反対はしていないものの、彼が支持しているアメリカンスチール労働組合は数回にわたって反対の意思を明確にしています。
関係者によると、司法省の調査の焦点は、新日鐵がアラバマ州カルバートに持つ鉄鋼工場の所有権にあるといいます。この鉄鋼工場は、新日鐵と世界第二位の鉄鋼メーカーであるアルセロールミタルとの合弁企業です。もし新日鐵が買収を完了すれば、この日本の会社はアメリカで約2000万トンの生産能力を制御することになります。司法省は、新日鐵が現在保有する他の資産についても調査を行い、競争を妨げる行為がないかを確認する可能性があります。
この買収案件が順調に完了すれば、新日鐵は鞍山鋼鉄を超えて世界第三位の鉄鋼メーカーになり、アメリカ地域での影響力も大幅に高まるでしょう。